[800101]○○の室[244345]

「……ああ、憂鬱だわ……、なんでわたしがこんな目に……」
急な人事異動で、麗子が総務部秘書課から昇降機接遇係になった時は、社内の誰もが驚いた。
平たく言えば、社長付き秘書からエレベーターガールに転落したわけである、左遷も甚だしい話だ。
しかし麗子には、この急な異動の理由がわかっていた。
総務部長の浜田の差し金――
浜田は妻子がある身でありながら、社長秘書である麗子にしつこく夜の誘いをくり返し、その度に麗子にきっぱりと拒絶され続けていたのだ。
今回の異動は、浜田の陰湿な仕返しとみて間違いないだろう。
しかも、エリート街道を歩んできた麗子に、エレベーターガールの経験などあるはずもない。
もちろん麗子はその旨を告げたが、浜田は
「――お客様の命令に絶対○○すること」
と答えるだけだった。
そして、今日初めて、麗子はエレベーターガールとして出勤することになったのである。